レッドクリフ partT

監督:ジョン・ウー

脚本:ジョン・ウー

2008年:米国・中国・日本・台湾・韓国



★★★★

 

100億円もの巨費を投じてつくられた巨編です。監督のジョン・ウーは「スペクタクル大作は、かつてはハリウッドでつくられたが、これからはアジアでつくられる」と語っているほど自負しています。たしかに、東アジアが一大映画文化の発信地となってきたことを感じさせます。


内容は、タイトルの「レッドクリフ=赤い崖」が示すように、三国志の赤壁の戦いの話です。もともとは一つの作品として計画されたそうですが、異常な長時間となってしまったので、partTとpartUに分けられることになったとのこと。二つに分けても、なお一編が2時間半もの長尺ですから、えらいボリュームです。事前には、「途中で退屈しないかな」とも思っていましたが、見てみるとそれほどの長さには感じず、ということは面白かったということだと思います。


三国志の主人公は劉備と相場が決まっていますが、この映画では孫権の部下、周瑜(トニー・レオン)が主役格で存在感を放っています。トニー・レオン、かつて『ブエノスアイレス』などでは、ちょっと線の細いバランスを欠いた男を演じ、そんなイメージがあったはずなのに、本作では堂々たる武将としてオーラを発しています。役者って変わるものだなあと感心することしきりでした。


もう一人の主役は諸葛孔明(金城武)で、こちらは目元涼しき快男子という役づくりがなされていました。今回、金城武はアクションシーンがなく、彼のアクションを楽しみにすると当てが外れます。でも、なかなかいい味を出して好演していたと思います。


もっとも印象に残ったのは、孔明が周瑜の許を訪れ、劉備と孫権の合同軍をつくって曹操に対抗しようと申し出るシーン。孔明は具体的な話をまったく切り出さず、ただ周瑜の誘いに応じて琴を弾くだけ。周瑜と孔明の合奏が妖しく織り成され、言葉は交わさずとも二人の気持ちは相通じている、という設定。この琴の演奏がなかなか魅せてくれ、ほんとうに弾いているのかどうかはわかりませんでしたが、興味深く見ることができました。武人であっても一流の者ならば芸術に造詣が深くなければならない、というのもいいですね。


ストーリー的には、肝心の赤壁の戦いには一切入らず、“いいとこ”で「次回につづく!」で終わってしまったのにはのけぞってしまいました(表示が出たとき場内がどよめきました)。そのため、このpartTは長大なる予告編という感じもします。もし、赤壁の戦いだけでいいという人がいたら、partTは見なくてもいいほどです。また、そんなことなので、盛り上がりという点でも少々物足りないものが残りました。


周瑜の妻の小僑と孫権の妹の二人だけが主な登場人物のなかでは女性でしたが、partTではほとんど存在理由がわかりませんでした。別にいなくてもどうってことない感じで。ということからすると、この女性二人がpartUでは何らかの鍵を握ってくるものと思われます。


先ほど盛り上がりに欠けるといいましたが、少しは戦いのシーンもあり、壮大なスケールを描こうとしていますが、このときのCGがちゃちいのがいただけません。矢がいっぱい飛び交うシーンなんかも、まるで絵で描いているみたいで、100億円もの制作費をかけたと銘打っているわりには少々お粗末です。PartUでは、おそらく戦いがメインとなるでしょうから、CGのクオリティは改善してほしいものです。


取り立ててどこが傑出していたというものはあまり感じられませんでしたが、全体的にまずまず楽しめる出来にはなっていたのでは、と思います。あと、岩代太郎の音楽はかなり頑張っていたと感じました。

(08.12.10)